デュエプレで突入する不死鳥編についての基礎知識その1

本日10日、7弾がリリースされデュエプレもデュエマ第五のシリーズ”不死鳥編”に突入しました。
 で、この不死鳥編、ゲーム内外において問題山積みでデュエマ屈指の問題児シリーズとして悪名高い(とばっちりと偏見もある)上に種族の総とっかえで転生編で引退した人と次の極神編からデュエマを始めた人が多いため、実態を知っている人が少ないのが現実、という事で自分がザックリと不死鳥編についてを紹介します。

まずは基礎情報、不死鳥編はデュエマ第5のシリーズで2006年度のシリーズになります。”不死鳥編”はスペクタクル・ノヴァと読みが当てられました。該当する弾は
DM‐19「不死鳥編第1弾」
DM‐20「不死鳥編第2弾魔闘竜×機兵弾」 魔闘竜×機兵弾の読みはジ・アルティメット・ノヴァ
DM‐21「不死鳥編第3弾封魔王の系譜」 封魔王の系譜の読みはヒストリー・オブ・デビル・ノヴァ
DM‐22「不死鳥編第4弾超神龍雷撃」 超神龍雷撃の読みはザ・ドラゴニック・ノヴァ
DM‐23「不死鳥編第5弾冥龍王帰還」 冥龍王帰還の読みはジ・エンド・オブ・ユニバース

 以上の5つのエキスパンションが登場しました。デュエマは1年で4つのエキスパンションを出すのが通例ですが不死鳥編は5つの弾が発売されました。
内容ですがカード紹介などで散々語った通り、転生編までの種族は大部分がいなくなり友好色にまたがる5つの新種族”ハイブリット種族”と進化元を3体必要とする進化GVのフェニックスをプッシュするシリーズとして始まりました。
しかし、この種族一新によってインフレもリセット、旧種族との差別化と新機軸能力を中心に据えた結果、不死鳥編第1弾からあまり人気が出ませんでした。その後も売り上げが振るわなかったのか不死鳥編第4弾はクリスマス商戦も見据えドラゴン復活を大きくプッシュ、派手な(実用性の高い)カードを多数収録したため不死鳥編で最も好評な弾となりました。その一方で次の不死鳥編第5弾はシリーズ最終章としては弱すぎるカードが多数収録されたこともあって闘魂編第2弾(呪紋の化身とオマケしかなかった弾)と双璧を成すデュエマ最大の地雷弾でした。終末ナスオ大戦の転生編第4弾は後年再評価されるカードが多数あったため評価を持ち直しましたが、この不死鳥編第5弾はその動きすらないことからもいかにしょっぱいかが分かります。

 全体はこんな感じです。総評すると種族の一新で新種族の種族デッキをプッシュしようとしたが、1から種族デッキを組んで各種族のデッキが強くなるまで時間が掛かり過ぎたため不評で売り上げが落ちた。そのテコ入れでドラゴンを押し出して持ち直したけど最後の弾で再び暗黒にたたき落とされたシリーズという事になります。
 収録枚数に上限がある以上種族を入れ替えるなら現代デュエマのようにシリーズ第1弾発売の前に各種族のスターターデッキを発売しておけばエキスパンション収録のカードに各種族の基礎カードで収録枠を取られることなく個性とインフレが出せたハズ…と商品展開のノウハウの無さも影響していると自分は思っています。

 ではなぜこのようになってしまったかについてですが直前まで聖拳編の‥‥もといデュエマ史上最大の問題児”無双龍騎ボルバルザーク”が環境を席巻、ボルバルマスターズと揶揄される環境を作りだし、ボルバル亡きあとにはボルメテウス・サファイア・ドラゴンが環境上位を独占し始めたため開発側が過度に強いカードを作ってはならない。環境を壊さないように安心安全なデュエルマスターズに戻そう(ただしボルバル以前が平和かと言われるとそうでもなく子供がやるカードゲームのバランスではない)という意識が過剰に働いた結果、不死鳥編のカードパワーが不足したというのが理由だと思われています。当時、デュエマの開発をしていたタカラとトミーが合併し、不死鳥編はタカラトミーになって最初のデュエマのシリーズなので開発環境も混乱気味だったのでは?という憶測もできるなど噂や黒い話があったりなかったりしました。
とまあ、バランスブレイカーカードによって荒れ果てた環境と会社の混乱という渦中の中で作られたシリーズが不死鳥編です。次は当時の対戦環境話に行きます。

 プレイヤー側は会社の合併とかそんなことは全く気にせずデュエマをやっていたわけなのですが、その環境はというと”サファイア地獄”不死鳥編前半の環境はこの一言で片付きます。転生編末期から環境上位にいた”牙サファイア”や”タワーサファイア”に入れ替わる形で不死鳥編第1弾に登場したデュエマ初のリアニメイト呪文インフェルノ・ゲート(デュエプレ版より-2コスと非探索)と山札を見たうえで墓地を肥やせるダンデ・ナスオとロストチャージャーを組み合わせた茄子サファイアが環境トップに躍り出ます。この時点で多くのガチプレイヤーが気付いた「ボルバルとおんなじじゃねーか」と、ボルバルもボルバルに勝てるボルバルデッキが開発されましたが、サファイアもまたサファイアに勝てるサファイアデッキを生み出し続けました。茄子サファイアに有利な新型除去サファイアが生み出されボルバルマスターズの再現となりました。
 しかし、ボルバルマスターズよりかはサファイア地獄の方が環境的には多彩でした。転生編期に確立した各種単色速攻(黒単はザマルがパワー4000、緑単は1コスギフトでデュエプレ版より強いため当時の環境に存在した)や聖拳編より続くイニシエート、ガーディアンを主力とした白青黒の除去コントロール、まだ使用可能だったヘルスラッシュなどを使った白青黒赤ライブラリアウトといった転生編末期に環境にいたデッキたちはその確立した戦術でサファイアに対抗していました。
 一方で不死鳥編で登場したハイブリット種族たちはその多くがサファイアはおろか二番手グループのデッキたちにすら届きませんでした。大型弾120種と小型弾1弾60種のカードだけで強いデッキが作れず、到底かなわなかったのです。そんな中でグランド・デビルだけは独自のドローエンジンと優秀な進化獣、フェニックスを有しておりその粘り強さで環境に入る事が出来ました。以後もグランド・デビルは強力なフェニックスなどを獲得し最強のハイブリット種族として既存のドラゴンや種族デッキ、除去コンと環境で戦っていきます。
 不死鳥編前半期の環境はサファイア除去コンか速攻でなければ勝てない環境でしたが、サファイアが圧倒的多数な事を逆手に取った”チューザビートダウン”が大会で優勝するなどボルバル時代よりかは環境に幅がありました。とはいえ、サファイアの存在が圧倒的であり、このデッキに勝てない、もしくはサファイアにない強みがなければ環境に残れないという環境でした。
 そんなサファイア地獄がボルバルマスターズ並みに続き環境が硬直化すると思われた中、サファイアとヘルスラッシュ、ロストチャージャー、フューチャースラッシュがプレ殿という措置が発表され、施行されます。これによってライブラリアウトおよびサファイアを使った全てのデッキが構築困難となり環境が激変しました。ボルバルマスターズを考えると1年を待たずしてサファイアのプレ殿措置は異例とも言え、長きにわたって多くのデッキ(と子供たち)を苦しめてきたLO呪文が環境からいなくなりデュエマの環境はここから多様性が生まれていきました。
 この殿堂施行では各種速攻系、LOに頼らないフィニッシャー型の除去コントロールは影響をあまり受けなかったため環境に残りました。此処に強力なクロスギア(デュエプレ未実装)バジュラズソウル(未実装)を使うビートダウンデッキ”牙バジュラズ”、新たなドラゴンを獲得しついに環境へ進出したバジュラを組み込んだ”ドラゴンランデス”、更なるフィニッシャーなどが追加され強さに磨きがかかったグランド・デビルのデッキが活躍し始めました。
さらにカードプールの充実によりようやくアーク・セラフィム(強いが構築難度が高い)、構築済みデッキによって速攻気味のデッキが組めるようになったティラノ・ドレイク、伝説のサンテ・ガト・デ・パコを核としたドリームメイトといったハイブリット種族のデッキがようやく顔を見せ始めました。
 他、DM‐22の強力なドラゴンたちによって”牙デルフィン”、”グールジェネレイド”、”連ドラ”といったドラゴンデッキが強化されたり生み出されていきました。
一方で究極銀河ユニバース、超神星ビックバン・アナスタシスといったド派手なフェニックスは進化元がまだ充実していなかったためその活躍は何年も後の事になります。
以上がTCG版不死鳥編1年間の対戦環境です。まとめると前半はサファイア地獄。サファイアとLO呪文の規制、カードプールの充実により環境が多彩化し極神編へとつながる基礎を作った後半期となります。

 更に不死鳥編期の問題としてデュエマのアニメ(実は遊戯王に続くカードゲームアニメ第2号作品でもあるため、遊戯王共々カードゲームアニメの基礎を築いた)の方も不死鳥編期は主人公が切札勝舞から夢見テルに変わったりとこちらも混乱気味でした。不死鳥編の新機軸が不評だった関係か結局末期には主人公を勝舞に戻して再スタート。映画公開の栄光は完全に失われ放送時間が短くなったり、~転生編までのアニメ、無印とチャージはDVDが出たが以降はなし(VS以降はニコ動でみられるからDVDがなくても安心)だったり、キャラクターが3D化される(これもVSからセル画に戻る)などいろいろと不死鳥編の混乱はデュエマという商品ブランドの危機でもありました。
他にもローソンコラボでハイブリット種族のキーカードを限定パックで出し、子供たちに優しくない仕様など各所で問題が噴出し続けました。

さて、ここまで散々不死鳥編はダメダメだったことを上げてきましたがよかったこともありました。数少ない評価ポイントは”構築済みデッキの質の向上”です。転生編までの構築済みデッキはデュエプレにもある構築のレアリティ制限(当時はSRなしVR1枚という驚きの制限措置)や環境をまったく考慮せず、雰囲気でコンボ(のようなもの)やキャラクターの関連商品を謳い文句にリリースしてきました。これを不死鳥編ではVR1枚がSR1枚に、Rも枚数を増やし、デッキコンセプトを明確にしました。その結果、ティラノドレイクのビートダウンデッキ「マーズ・フラッシュデッキ」とドラゴンランデスをテーマにした「エッジ・オブ・ドラゴンデッキ」は改造こそ必要でしたがコンセプトがはっきりしていたため、小規模の改造で前者は赤単速攻かティラノ・ドレイクビートダウン、後者はドラゴンランデスのガチ仕様にすることができました。改造先も環境で戦える力を持っており、ようやく構築済みデッキを買って遊べる楽しさがあるようになりました。
 そして不死鳥編最後の商品にして当時の構築済みデッキ最強ともいえる「ビギナーズ・ビースト・スラッシュデッキ」が登場しました。このビーストスラッシュは構築済みデッキ史上初のデモハン複数枚投入されていました。
 これがいかに衝撃的かというと、これまで10種以上の構築済みデッキが発売されてきましたがデモハンの収録は2種のデッキで1積みな上にデュエマ初年度の商品のみという現代では考えられないほど不死鳥編当時のデモハンは高価なカードでした(同じくホーリースパークも2種1積みと配布が渋られており高価なカードだった)。なのでデュエプレでバンバントリガーが飛び交って戸惑うのは当時、ガチではなく子供たちの遊びにおいてデモハンやホリスパといった強力なトリガーがなかったことも関係があるのかもと思っています。
 少し話が脱線しましたが、ビースト・スラッシュはグランド・デビルのビートダウンデッキでそのまま店舗の大会に持ち込んでも戦える力を持っており、文字通り買って、ルールを覚えれば本当のデュエマが楽しめるという画期的な商品でした。初心者は下手にいじらない方がよいとまで言われ、これまでの改造必須から大きく進歩しました。
 不死鳥編唯一の功績に近い構築済みデッキの改善ですが惜しい点があります。それは発売時期でした。「マーズ・フラッシュ」と「エッジ・オブ・ドラゴン」は不死鳥編第3弾発売後、ビースト・スラッシュは不死鳥編第5弾の後と”遅すぎる商品”でした。加えてハーフデッキも合わせると不死鳥編期ではドリームメイトの関連商品が発売されず、ドリームメイトのデッキは「ワイルド・キングダム」が極神編末期に発売(こちらも完成度が高くパンダ将軍はこのデッキの限定カードだった)とプッシュの偏りがありました。
歴史にIFはありませんが、もし「マーズフラッシュ」、「ビースト・スラッシュ」、「ワイルド・キングダム」のデッキが収録内容そのままに不死鳥編第1弾の前後に発売されていたら、ハイブリット種族の評価は違ったものとなり、ひいては不死鳥編の評価そのものも変わっていたかもしれないと言えるだけの商品であり、以後のデュエルマスターズに影響を与えました。

不死鳥編を全体から見ると以上のような感じになります。どことなくデュエプレ似ているような部分もあるので繰り返してほしくない部分がちらちらと見えます。こんな感じで商品の質、対戦環境、メディアミックスの各方面でボルバルマスターズとそれに続くサファイア地獄という前年までの問題児による混乱の結果、問題が山積したシリーズになってしまったのが不死鳥編です。とはいえここで得られた失敗があったからこそ人気回復の極神編引いてはその後のデュエル・マスターズ発展がありました。人生山あり谷あり万事が順風満帆とはいかないものです。
以上で不死鳥編についての基礎知識その1を終わります。なんだかこれだけ聞くとデュエプレは大丈夫と思いますが大丈夫です!!ハイブリット種族もフェニックスも不死鳥編とそれ以後のカードを使ってデッキが組めました。という事はつまり、カードをきちんと実装すれば強いデッキが組めるという事です(7弾のカード普通に使えるよね)。次回!不死鳥編基礎知識編その2~ハイブリット種族とフェニックス紹介に続きます。